皆さんはα-GPCという成分をご存知でしょうか?
この成分はアルツハイマー型認知症の治療に効果があるとされており、海外では薬の開発が始まっています。
そして最近の研究によってα-GPCには身長を伸ばす効果もあるのではないかと大きな話題をよんでいます。
この記事ではそんなα-GPCについて解説したのち、身長を伸ばす効果やα-GPCを豊富に含む食品・食材についてご紹介していきます。
α-GPCとは
α-GPC(グリセロホスホコリン)とは、天然に存在するコリン誘導体の一種です。コリン誘導体は「コリン」という成分を誘発させるために用いられます。
このコリンという成分はビタミンを助ける働きがあり、体内に入ると細胞膜や神経組織を修復する働きがあります。それ以外にも脂質代謝や肝機能の改善に効果があるとされており、体の機能を維持するために必要な成分です。
α-GPCは認知機能や記憶に大きく関わる神経伝達物質である「アセチルコリン」の前駆体、いわゆる前段階の役割を果たしています。そしてこのアセチルコリンの減少はアルツハイマー型認知症の原因になっているとも言われています。
α-GPCを取り入れることで、相対的に体内のアセチルコリンが増加することから、ヨーロッパではアルツハイマー型認知症を治療するための認知機能改善治療薬として使用されています。
α-GPCの成分
α-GPCはホスファチジルコリンと呼ばれる別のコリン誘導体と構造が似ています。
ホスファチジルコリンは脂溶性部分と水溶性部分のどちらも持つ構造であるのに対し、α-GPCはホスファチジルコリンから脂溶性部分を取り除いたものになります。
そのため水に溶けやすく、速やかに体に吸収される性質を持っています。
α-GPCは脳や母乳に多く含まれており、無臭でほのかに甘味があります。急性毒性試験でも2000mg以上/kgとされています。
これは60kgの人間の場合、12000mg、つまり1.2kgものα-GPCを一度に摂取しなければ問題ないとされており、非所に高い安全性が実証されています。
α-GPCの効果
認知機能改善
α-GPCはアセチルコリン前駆体としては唯一、血液脳関門(BBB)という脳内部への血液供給路を通過でき、脳に直接作用します。体内への吸収率も高く、新しいアルツハイマー型認知症への治療薬として期待されています。
メキシコで行われた研究によると、合計261人のアルツハイマー型の軽度から中程度の認知症に罹患した患者群に対しα-GPCを含有したカプセルを内服するグループと、プラセボのカプセルを内服するグループの2つに分かれ薬の有用性を実験しました。
90日後、180日後と比較を行い、カプセルを内服したグループではあらゆる認知機能検査において、維持または改善が認められたのに対し、プラセボグループでは維持または悪化が見られました。[1]
このことからα-GPCには認知機能改善に有用であるとされています。
[1]Instituto Nacional de la Senectud『アセチルコリン前駆体コリンアルホスフェレートによる治療後の軽度から中程度のアルツハイマー型認知症の認知改善:多施設二重盲検無作為化プラセボ対照試験』2003年1月 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12637119?dopt=Abstract
成長ホルモン分泌
近年の研究によりα-GPCが脳中枢にある下垂体という部分に働きかけ、成長ホルモン分泌ホルモンと協同し、成長ホルモンの産生を促す働きがあることが判明しました。
25歳前後の男性8人にα-GPCとプラセボをそれぞれ投与したところ、α-GPCを投与された男性はプラセボを投与された男性と比べ、成長ホルモンの分泌量が増加したと研究でも発表されています。[1]
成長ホルモンは筋肉や骨形成に非常に重要な働きをしており、これは20代を過ぎると加齢とともに減少していきます。
α-GPCを体内に取り入れることで、20代以降も成長ホルモンが分泌され、体内の生体機能の向上につながると考えられています。
[1] 立命館大学スポーツ健康科学部『グリセロホスホコリンは、成長ホルモンの分泌と若年成人の脂肪酸化を促進します。』2012年11-12月 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22673596
美肌効果
α-GPCには成長ホルモンの分泌を促す効果があります。
成長ホルモンには水分を肌内部に維持するコラーゲンやエラスチンといったタンパク質を合成する働きの他に、肌の弾力に関わるヒアルロン酸などの多糖類の生成を促進する働きがあります。
美容クリニックではホルモン注射などの治療もありますが、これは女性ホルモンや成長ホルモンを投与しているケースがほとんどです。
脂肪燃焼効果
α-GPCを取り入れることで、成長ホルモンが体内にある脂肪を遊離脂肪酸に分解します。遊離脂肪酸は血中を通って全身のエネルギー源となります。
また一部の遊離脂肪酸は血中を通って肝臓まで運ばれます。肝臓まで運ばれた遊離脂肪酸はケトン体へと姿を変え、脳や筋肉、臓器にまでいきわたり運動によって最優先で燃焼されます。
日比野英彦氏、大久保剛氏が発表した『脂質系栄養素:コリンの普及に際し、アメリカの現状から』[1]という論文にはこのように記述されています。
「…脳下垂体前葉からの GH 分泌亢進は、内分泌腺である肝臓に働きかけ、ソマトメジ ン C(インスリン様成長因子 -1)を分泌させ、それらが標的器官に働きかける。一方、 脂質代謝を促して体脂肪の分解を助け、コレステロール値を減らす働きがある。GPC を経口摂取すると、投与 1 時間から 2 時間後に血中コリン濃度は増大する。コリン濃 度の増大後、GH 濃度も増大する。GH 濃度は、増大後、肝臓中の脂質が燃焼しやす い格好で血中に動員されるように遊離脂肪酸濃度とグリセロール濃度が上昇する。さ らに肝臓の脂質代謝は亢進し、エネルギー化(酸化)がしやすいケトン体のアセト酢 酸や 3- ヒドロキシ酪酸が上昇する」
これはα-GPCを摂取し、成長ホルモンが分泌されると肝臓に働きかけソマトメジンというホルモンを放出させるだけでなく、脂質代謝を促し体脂肪の分解だけでなくコレステロール値を減らしてくれるということを示しています。
[1]日比野英彦 大久保剛 『脂質系栄養素:コリンの普及に際し、アメリカの現状から 』2017年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/26/1/26_89/_pdf
ストレス抑制
人は大きなストレスを受けると、ストレスを受けた際に放出されるホルモンであるコルチゾールや副腎皮質刺激ホルモンを放出します。これらが長期的に続くと、うつ病や依存症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった不安障害の発症につながると考えられています。
α-GPCの研究を行う中で、体内に投与され続けると、ストレスホルモンのコルチゾール、副腎皮質刺激ホルモン共に減少することが明らかとなりました。
これによりα-GPCにはストレスが抑制・軽減する働きがあるとされています。
α-GPCに身長を伸ばす効果があるか
α-GPCには成長ホルモンを分泌させる効果があります。この成長ホルモンは身長に大きく影響しています。身長のメカニズムからα-GPCの関係性まで解説していきます。
身長が伸びるメカニズム
身長は80%程は遺伝によるものといわれており、「身長の公式」があります。
男性の場合:(父親の身長+母親の身長+13cm)÷2
女性の場合:(父親の身長+母親の身長-13cm)÷2
では残りの20%は何が関係しているのかというと、「食事」と「生活習慣」になります。
食事では身長を伸ばすことができるように、骨の材料となるタンパク質を積極的に摂取することが推奨されています。タンパク質を豊富に体内に取り入れることで、成長ホルモンが骨を形成しやすくなり身長が伸びていきます。
しかし成長ホルモンには限界があります。いくらタンパク質を摂取しても、成長ホルモンが少なければ、身長を伸ばすことはできません。
特に女性は男性より成長ホルモンの分泌を促す女性ホルモンの量が多いため、男性よりも早く身長が伸び始めます。
そして女性ホルモンは骨端線を閉鎖する効果もあるため、女性ホルモンの量が多い女性は男性より低身長となる場合が多くなります。
生活習慣においては運動と睡眠が重要になってきます。
骨はタンパク質と成長ホルモンによって作られると前述しました。さらに骨を成長させるためには骨に適度な刺激を与える必要があります。
身長を伸ばすことを意識するのであれば、骨に「縦方向への負荷」を与えると良いと言われています。
縦方向への負荷といっても歩いたり、ジャンプなどの運動で十分です。バスケットボール選手やバレーボール選手が身長の高い人が多い理由はジャンプをする機会が多いからとする説もあります。
適度な運動を心掛けましょう。
身長の成長期
身長というものは常に一定のスピードで伸びるわけではありません。主に「乳幼児期」、「小児期」、「思春期」の3つの時期に大きく成長します。
乳幼児期
生まれたばかりの新生児の身長は50cm程です。1歳になるまで70~80cm程度まで伸びて、4歳になるころには生まれたときの約2倍程の100cmまで成長します。この時期の身長の伸びには栄養状態が大きく関与しています。
小児期
4歳以降急激な身長の伸びは落ち着き、年間6cm程度ずつ伸びていきます。この時期の身長の伸びには成長ホルモンが大きく関与しています。
思春期
個人差はありますが男子は13歳、女子は11歳頃に身長の急激な成長のピークがあります。このピークを過ぎると身長の伸びは緩やかになり、やがて身長の伸びが止まります。この時期の身長の伸びには性ホルモンが大きく関与しています。
身長が低い原因
低身長の原因として「成長ホルモンの分泌不足」、「骨や軟骨の異常」、「染色体の異常」、「病気以外の原因」などさまざまな可能性が挙げられます。
一番多い原因として挙げられるのが「成長ホルモンの分泌不足」です。
成長ホルモンの分泌量は1日のうちでも大きく変動し、特に夜間の深い眠りにつく時間帯(22時~深夜2時)に多く分泌されます。成長ホルモンの分泌を促すためにも十分な睡眠をとる必要があります。
α-GPCによって成長ホルモンの量は増加する
α-GPCを摂取することによって、成長ホルモンの量が増加することはお伝えしました。成長ホルモンが盛んに分泌されると、骨形成や筋肉を強化できます。したがって身長も伸びやすくなるとされています。
しかしながらα-GPCに直接身長を伸ばす効果があるわけではなく、あくまで成長ホルモンの分泌を増加させるだけです。医学的には身長が伸びるとされる文献はなく、まだ実証されていません。
α-GPCを多く含む食品・食材
α-GPCはレシチン同様のコリン誘導体の一種です。すでに一般販売されているレシチンやホスファチジルコリンなどもコリン誘導体であり、
アメリカ食品医薬局(FDA)によるGRAS(generally recognized as safe:アメリカ食品医薬局より食品添加物に与えられる安全基準合格証)の認定を受けている食品素材です。
α-GPCは一般発売されている食品にも含まれています。
α-GPCを多く含む食品としてバナナやヨーグルトが挙げられます。
以下α-GPCを含む主な食品を一覧化しました。
食品名 | α-GPC量(mg) |
プレーンヨーグルト | 9.1 |
チーズ | 8.48 |
タラ | 30.04 |
バナナ | 5.6 |
牛レバー | 77.93 |
食品100g中に含まれるα-GPC量
α-GPCが産生を促すコリンという成分は体内で必要量を作り出せません。
そのため食品からコリンを摂取しなくてはならず、FDAではコリンの摂取量を年齢別に定めています。α-GPCは1000mgに対し、400mgものコリンを含んでいることから、効率的にコリンを摂取できる食材です。
また近年ではα-GPC関連のサプリメントも販売されており、食品からではなく、サプリメントからの補給も可能となりました。
ドラッグストアなどでも一般販売されているため、食品からの摂取が難しい場合は検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
α-GPCの成分や効果、身長を伸ばす効果について解説してきました。
・α-GPCはコリン誘導体の一種で、脳や母乳に含まれる人体に安全な成分。
・α-GPCにはアルツハイマー型認知症の治療薬にも用いられており、他にも成長ホルモンの分泌や脂肪燃焼効果、美肌効果、ストレス抑制効果が認められている。
・α-GPCを豊富に含む食品として、ヨーグルト、チーズ、タラ、バナナ、牛乳が挙げられる。他にもドラッグストアで販売されているサプリメントも効率的にα-GPCを取り入れることができる。
・α-GPCを摂取することによって、成長ホルモンの分泌量は増えるが、直接的に身長を伸ばす効果は実証されていない。(まだデータが少ない)
α-GPCは近年注目されている成分です。
それに伴ってさまざまな実証実験が始まっており、さまざまな効果が期待できます。α-GPCは成長ホルモンを分泌させるため、間接的ではありますが、身長を伸ばすために必要な成分といえます。
ただしα-GPCだけに頼ることなく、普段の食事や運動、生活習慣から身長を伸ばすためには必要なこととなります。この記事を参考にα-GPCについて正しい知識・理解ができると良いですね。